差別化よりも強いブランディングの力:メンタル・アベイラビリティが利益率を決定する

ECで商品を売る際、差別化が重要であることは疑いようがない。商品機能の優位性、デザイン、価格、使い勝手など、他社より優れている点をつくることで選ばれやすくなる。しかし、現実には「差別化をしなくても売れる商品」「たいした優位性がなくても高利益で売れているブランド」が存在する。この矛盾を説明するものが“ブランディング(メンタル・アベイラビリティ)”の概念である。

差別化は、商品そのものの違いで勝負する戦略だが、ブランディングは“消費者の頭の中に残るイメージで勝つ”戦略である。

象徴的な例がアップルだ。
アップルと言えば、誰もが iPhone、Mac を思い浮かべる。
これらの商品は高度な技術力で作られているイメージがあるが、実際には他社のスマートフォンがスペックで勝っているケースは多い。Macも同様で、性能面だけならDellのほうが優れている場合がある。

しかし重要なのは、スペックの優劣が売上を決めていないという事実である。
アップルは技術的に最高だから売れているのではなく、ブランドイメージによって選ばれている。

興味深いデータとして、
・Macの反復購入者は55%
・Dellの反復購入者は71%
という事実がある。
数値だけ見れば「Dellの方が熱狂的ファンが多いブランド」に見える。しかし世の中のイメージは真逆で、アップルの方が熱狂的ファンを抱えるブランドとして認識されている。この“イメージの逆転”こそがブランディングの力であり、ブランドが“人々の頭に住みついている状態”を指す。

マーケティング理論ではこれを メンタル・アベイラビリティ(想起される存在感) と呼ぶ。

消費者は「スマホ」と聞けば iPhone を思い出す。
「ノートPC」と聞けば Mac が頭に浮かぶ。
カテゴリ名を聞いたときに、最初に想起されるブランドほど強いブランドになり、選ばれる確率が極めて高くなる。

メンタル・アベイラビリティが高いブランドは、
・少し高くても売れる
・スペックで負けていても売れる
・差別化が弱くても売れる
・広告効率が高い
・レビューが多少悪くても売れる
という“非合理的に見えて合理的な結果”を生む。

実際、アップルの商品は性能差による差別化が大きくないにもかかわらず、極めて高い利益率で売れている。これは製品の優位性ではなく、ブランドイメージによって消費者が安心して選択しているからだ。人は合理的に価格と性能を比較して商品を買うのではなく、「最も頭に浮かんだブランド」を選ぶ傾向が強い。

ECにおいても同じことが起こる。
レビュー数が多く、見た目が綺麗で、売れ筋として認知されている商品は“安心して買える”ためCVRが高くなる。実はスペックは大差ないのに、ブランディングが強い商品は広告費をかけなくても売れ、利益率も高くなる。

差別化は「優れているかどうか」で戦い、
ブランディングは「思い出してもらえるかどうか」で戦う。

この2つは似ているようで全く違う。
そして、長期的に最強なのはブランディングである。

差別化は競合が真似できる。
ブランディングは競合が真似できない。

差別化は機能競争でありコモディティ化しやすく、すぐに限界に達する。
一方、ブランディングは“継続的な認知の積み重ね”であり、価値が蓄積される。

楽天市場でも同様で、商品企画・LP・サムネイル・レビュー・ストアデザインなどすべての接点で統一された世界観を伝えると、
・カテゴリ名を見た瞬間に自社商品が思い浮かぶ
・検索結果で自社の商品を先にクリックする
・広告が安くても強く効く
・指名検索が増える
という強烈なブランディング効果が生まれる。

これができれば、競合がどれだけ価格を下げても、スペックを上げても、真似できない強さを持つことができる。

つまり、
差別化よりも「思い出されるブランド」であることが、最大の武器になる。

メンタル・アベイラビリティを高めれば、競合がどれだけ参入しても、価格競争を避け、高利益率で売り続けることができる。
これは差別化ではなく、ブランドの力で勝ち続ける状態であり、EC運営において最も持続的で安定した成功モデルと言える。

研究レポート

Posted by takahiro