迷わないための“最低CVRフロア”を商品別に決め、そこからクーポンを“必要最小限で積む”

クーポンは強力なレバーですが、基準が曖昧だと「割引が常態化→利益が薄いのに戻せない」という沼に陥ります。そこで、商品(または広告グループ)ごとに 最低CVR(成約率の下限=フロア) を先に決め、そのCVRを切った時だけクーポンを段階的に付与する運用に統一します。前提はもちろん「利益が一定額(限界利益高)取れること」。この二重ガードで、感覚運用から設計運用へ移行します。

最低CVRの設計手順(商品別・KW別に)
1)利益フロアを決める:1件あたり限界利益(価格−原価−手数料−可変物流−ポイント−クーポン)≥X円。さらにRPPを使うSKUは損益分岐ROAS=1/限界利益率を併記。
2)素のCVRを把握:直近2〜4週、クーポン0〜低率でのCVRをキーワード別・デバイス別で計測(注力KW/指名KW/ロングテールで分ける)。
3)最低CVRを決める:通常日とイベント日で閾値を分離(例:通常1.0%・イベント1.3%)。カテゴリ平均・自社実績・利益フロアを踏まえて現実的な下限に。
4)クーポン段階を定義:0%→3%→5%→8%→10%…のラダーを用意し、2~3日ごとに一段だけ上げる/下げる。いきなり大幅変更はCTR/CVRの弾力性を見誤る。
5)戻し基準を明文化:最低CVRを2連続計測期間で超過したら1段戻す。総限界利益高が基準比−5%を2週継続で即時戻す。
6)測定ルール:RPP入札は検証中は固定。ランディング/在庫/レビュー施策は凍結し、影響源を価格(クーポン)だけに限定する。

運用ロジックの基本

  • CVR<最低CVR:ラダーを1段上げ、利益フロアを満たすか同時に確認。満たせなければRPPの無駄クリック削減・タイトル/サムネ修正を先行。

  • CVR≧最低CVR:現状維持。他店や他SKUが2%出ていても、自店が目標利益を満たして最低CVRを超えていれば減額方向で調整(クーポン“慣れ”を避ける)。

  • 投資フェーズ明示:検索上位狙い・レビュー獲得など投資目的がある期間は、最低CVRを一時的に下げるのではなく、利益フロアを“投資枠”として別に計上して許容する(何となくの赤字を排除)。

多店舗展開時のカニバリ対策:役割×最低CVRのマトリクス

  • 1番手(利益軸):最低CVRやや低め(例1.0%)+利益フロア高め。価格・クーポンは堅めに、指名KWを優先。

  • 2番手(成長軸):最低CVRは1.2〜1.5%に設定し、ラダーの上限を1番手より高めに許容。代わりにキーワード・サムネ・LP訴求を差別化し、同一KWで正面衝突させない。

  • 3番手(育成軸):イベント日に限定して最低CVR達成を目指す「点の投資」。平常日はRPPミニマムで露出維持。
    → こうして店舗役割ごとに最低CVRと許容クーポン上限を明文化すると、「どちらの店をどこまで割るか」で迷いが消え、カニバリズムを抑制できます。

最低CVRは“売上のため”ではなく“利益のため”
CVRフロアは、CTRや単価と掛け合わせて 総限界利益高=受注数×1件限界利益 を最大化するための“条件”です。

  • 値上げ(実質値上げ)でCVR/CTRが下がるのは既知。最低CVRを割るなら、まずサムネ・タイトル前半・1stビューのLPOで非価格のCVR改善を試み、それでも届かない“差分だけ”クーポンで埋める。

  • 逆にCVRがフロアを大きく超えているのにクーポンを維持している状態は“取り過ぎ”。1段ずつ戻し、総限界利益高のピークを探る

現場に落とすチェックリスト

  • 商品別:最低CVR(通常/イベント)・利益フロア(円)・損益分岐ROAS(=1/限界利益率)を1枚で可視化。

  • 週次レビュー:①総限界利益高、②CVR対フロア乖離、③CTR、④在庫回転、⑤広告ROAS。

  • ガードレール:CVRがフロア−0.2pt超を2期間継続→ラダー+1/CVRがフロア+0.3pt超を2期間継続→ラダー−1。

  • 例外規定:SS・買い回り等の“山”はフロア+0.2ptを暫定目標に、終了48〜72時間で元ラダーへ戻す。

ケース例
最低CVR=1.0%。クーポン0%でCVR0.5%(利益○)。→まずサムネ差し替え&タイトル前半を“用途×ベネフィット”に変更。CVR0.8%まで改善。→クーポン3%で1.1%到達(利益フロア維持)。→翌週、CVR1.3%が継続したためクーポンを2%へ減額テスト。総限界利益高が維持できたので2%を採用。

まとめ

  • 最低CVRフロア+利益フロアの二重基準で、クーポン判断を自動化する。

  • まず“非価格”でCVRを押し上げ、不足分だけクーポンで補う。

  • 多店舗は役割別にフロアと上限を分け、同一KWの正面衝突を避ける。
    この枠組みなら、割引に振り回されず、**総限界利益高を最大化するための“戻せる運用”**が実現します。

研究レポート

Posted by takahiro