損益分岐ROASを理解したうえでRPPを回すべき理由
RPP広告を運用する際に、「ROASだけ見ている状態」はかなり危険です。例えばROAS500%と聞くと、一見“悪くなさそう”に見えますが、商品ごとの限界利益率によっては、ROAS500%でも普通に赤字運用になっているケースがあります。
逆に、ROAS300〜400%でもしっかり黒字が出ている商品もある。ここを見極めるための指標が「損益分岐ROAS」です。
まず整理しておくべき基本の式
前提となる考え方を一度きちんと数式で整理しておきます。
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ROAS = 売上高 ÷ 広告費
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限界利益高 = 売上高 × 限界利益率
※限界利益率=1 −(原価率+楽天手数料率+梱包・発送など変動費率)
RPP広告を「トントン」で回している状態とは、
広告で作った売上の“限界利益高”が、そのまま広告費とイコールになっている状態です。
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損益分岐条件:
限界利益高 = 広告費
ここから損益分岐ROASを導くと、
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広告費 = 売上高 × 限界利益率
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損益分岐ROAS = 売上高 ÷ 広告費
= 売上高 ÷(売上高 × 限界利益率)
= 1 ÷ 限界利益率
となります。
つまり、損益分岐ROASは「限界利益率の逆数」です。
限界利益率25%なら、
損益分岐ROAS = 1 ÷ 0.25 = 400%
限界利益率20%なら、
損益分岐ROAS = 1 ÷ 0.20 = 500%
この時点で「ROAS500%出ているからOK」と判断するのが、どれだけ危ういかが分かります。
商品ごとに損益分岐ROASは違う
原価・送料・楽天手数料・梱包コストは商品ごとに違うため、限界利益率も商品ごとに異なります。
したがって、「全商品一律でROAS○○%以上ならOK」という管理は、本質的には間違いです。
例えば、
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A商品:単価5,000円、限界利益率30% → 損益分岐ROAS ≒ 333%
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B商品:単価3,000円、限界利益率20% → 損益分岐ROAS = 500%
この場合、ROAS400%で回しているとすると、
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A商品は黒字(400% > 333%)
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B商品は赤字(400% < 500%)
となります。
「アカウント全体の平均ROASが450%だから大丈夫」のような見方をしていると、知らないうちに一部の商品で広告赤字を垂れ流している可能性が高い、ということです。
赤字運用が「悪い」のではなく、“知らずにやる”のが問題
あなたが書いている通り、赤字で運用すること自体が悪いわけではありません。
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検索上位を取りたい
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SS前に実績をためたい
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新商品のレビューを一気に集めたい
こういう“投資フェーズ”では、あえて損益分岐ROASを下回る運用(=意図的な赤字)を行うのは戦略として「あり」です。
ただし、
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この商品は損益分岐ROASが○○%
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今の運用は△△%なので、いまは意図的に▲円赤字で攻めている
という状態を理解したうえで赤字運用しているのか、
それとも
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ROAS500%出ているからなんとなく良さそう
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実は限界利益率が低くて、気づいたらトータル赤字
という状態なのかでは、経営的な意味合いがまったく違います。
実務上どう使うか(RPP運用の判断フロー)
実務では、少なくとも以下は商品(もしくは広告グループ)単位で持っておくとよいです。
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商品ごとの限界利益率(原価+手数料+変動費込み)
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そこから計算した「損益分岐ROAS=1÷限界利益率」
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実際のRPPのROASとの比較
その上で、
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「実 ROAS > 損益分岐ROAS」なら → 黒字なので、どこまでCPCを上げられるか検討
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「実 ROAS ≒ 損益分岐ROAS」なら → トントン。目的次第で攻めるか守るか判断
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「実 ROAS < 損益分岐ROAS」なら →
・投資フェーズとして許容している赤字か?
・そうでないなら、入札 or キーワード or 商品ページ側を見直す
という運用ロジックにしておけば、「何のために広告を打っているのか」が常に説明できる状態になります。
結局、“計算してから打つ”だけでRPPの質は一気に上がる
ポイントはシンプルで、
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ROAS=売上 ÷ 広告費
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損益分岐ROAS=1 ÷ 限界利益率
この2つを商品ごとに押さえたうえで、
「いま黒字で取りにいっているのか」
「いまは検索上位やレビューのために赤字で攻めているのか」
を自覚してRPPを回す、ということです。
ここが曖昧なまま ROAS500%という“数字の見た目”だけで評価してしまうと、
広告を回しているのにお金だけ減る、
「何のためにRPPやってるんだっけ?」という状態になります。
逆に、損益分岐ROASを理解していれば、
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どのROAS水準まで攻めてもいいか
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どこから先は“投資”として割り切るか
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どこで回収フェーズに切り替えるか
を冷静に決められるので、広告運用が「感覚」ではなく「設計」に変わります。


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