限界利益率にとらわれず限界利益“高”で判断すべき理由
多店舗展開において、利益管理の指標として“限界利益率”だけを見ることには大きな落とし穴がある。限界利益率は一見すると優れた指標に見えるが、出店数が増え、店舗ごとに戦略が異なる状況では、限界利益率だけを基準にすると投資判断が歪み、成長機会を大きく逃してしまう。
| 店舗 | 限界利益高 | 1個当たり限界利益高 | 販売個数 | 限界利益率 |
| 合計 | ¥89,500 | ¥407 | 220 | 20% |
| A店舗 | ¥82,500 | ¥550 | 150 | 28% |
| B店舗 | ¥6,000 | ¥200 | 30 | 10% |
| C店舗 | ¥1,000 | ¥100 | 10 | 5% |
| D店舗 | ¥0 | ¥0 | 30 | 0% |
今回のデータを見ても明確である。
A店舗は限界利益率28%で限界利益高82,500円を稼いでいる一方、B店舗は10%、C店舗は5%、D店舗は0%となっている。限界利益率だけで見ると、A店舗だけが優秀で、B~C店舗は“非効率”“利益に貢献していない”ように見える。しかし、限界利益率が低い店舗も、販売個数や販売実績を積むことで、来月・再来月に利益回収できる土台づくりができている点が重要である。
限界利益率に固執してしまうと、B~C店舗では“売ってはいけない商品”と判断され、販売個数はゼロに近づいてしまう。しかし、多店舗展開ではこの判断が事業の成長を阻害する最大の原因となる。限界利益率が低くても、限界利益高(利益の“絶対額”)がプラスである限り、その商品は会社の利益創出に貢献しており、さらに販売実績を積むことで将来的な順位上昇や露出拡大につながる。
この構造を理解するためには、利益管理を「率」ではなく「額」で見る必要がある。
今回の合計限界利益高は89,500円であるが、そのほとんどはA店舗が稼いでいる。もし“限界利益率25%以上でないと販売しない”といった判断基準にしてしまえば、B店舗(10%)、C店舗(5%)、D店舗(0%)は“販売不可”という判断になり、販売個数はゼロになる。しかし、それは 「売るべき店舗が売れなくなる」という致命的な意思決定ミス」 である。
特にB店舗やC店舗は、まだ市場での順位が低かったり、レビュー数が少なかったり、検索アルゴリズムに評価されていない段階である。こうした店舗は投資フェーズであり、限界利益率が低くても、販売実績を積んで順位を上げ、次月以降に回収フェーズに入れるよう育てることが非常に重要となる。
多店舗展開における理想的な構造は、
A店舗=利益回収店舗(黒字で利益を作る軸)
B〜C店舗=育成店舗(実績積み、順位上昇のための投資軸)
という役割分担である。
この育成店舗が機能していない状態では、全体売上は頭打ちになり、A店舗だけに依存するビジネスモデルとなる。これはリスクが高く、成長余地も小さい。だからこそ、限界利益率ではなく限界利益“高”を基準に、最低限赤字にならない範囲で投資を行い、来月・再来月での利益回収につなげることが重要になる。
商品単位で最終的に目標限界利益高を達成できればよく、それを実現するための過程では限界利益率が低くても問題はない。1個あたりの利益が100円でも、販売個数が伸びれば限界利益高は積み上がり、利益は確保できる。今回のデータでは、B店舗は200円×30個=6,000円、C店舗は100円×10個=1,000円と、限界利益率が低いながらも確実に利益を積み上げている。
さらに、B〜C店舗の販売実績が増えることで、検索順位が上昇し、広告依存度が下がり、次月以降の利益率が自然と改善していく。この循環こそが多店舗展開の強みであり、事業全体の利益最大化につながるポイントである。
限界利益率は“効率”を見る指標であって、“成長性”を見る指標ではない。
一方、限界利益高は会社としての“利益実額”を表す指標であり、成長に必要な投資余力を生む重要な指標である。
したがって、多店舗展開においては、
限界利益率を気にしすぎるのではなく、限界利益高を基準に判断することが本質的な利益最大化につながる。
そして、B〜C店舗を“赤字にしない範囲で運用し、販売実績を積むことで育て、翌月以降に回収フェーズに入れる”という考え方こそが、長期視点での正しい経営判断となる。
利益は“率”でなく“額”で作る。
この原則を軸に、A店舗で利益を稼ぎつつ、B〜C店舗を育成して市場全体を押さえることで、より強固で持続的な収益基盤を構築できる。


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