プロダクトライフサイクルにおける“第5フェーズ”の存在と、競合撤退後に訪れる再成熟期について

一般的にプロダクトライフサイクル(PLC)は「導入期 → 成長期 → 成熟期 → 衰退期」の4段階で語られる。しかし、楽天市場やEC上の実運用では、この4段階モデルだけでは説明できない現象がある。特に、成熟期を過ぎて衰退した商品であっても、長期的に見れば“もう一度成熟期が戻ってくる”ケースが存在し、これは従来の教科書的モデルには存在しない“第5フェーズ”とも呼べる状態である。

この第5フェーズは、「差別化が困難になり、競合も自社も衰退していく時期」を経て、競合が撤退し、自社のみが残ったときに訪れる“再成熟期”である。競合撤退後に市場が再び静まり、需要が一定量残っている場合、自社が唯一の供給者になるため、利益回収フェーズが再度訪れる。この再成熟期はEC特有の市場構造によって起きる現象であり、長期的な市場戦略では非常に重要な概念となる。

まず、通常の衰退期では商品力が一定水準で均質化していき、価格競争が激化する。差別化ポイントが消え、機能面・デザイン面・付加価値面で優位性を保つのが難しくなる。この状態で多くの競合は、利益率が低下し、在庫リスクが増し、撤退もしくは縮小せざるを得なくなる。一方、自社も利益を取りづらくなり、短期的には赤字耐性が問われる局面に入る。

しかし、この“衰退期”を一定期間耐えると、市場構造は大きく変動する。利益が出ず耐えられない競合が次々撤退し、供給者の数が減少する。需要がゼロになるわけではなく、一定のユーザーが商品を求め続けているため、供給者が減れば、販売機会が再び自社に集中する。つまり、衰退期の後に再度“成熟期”が訪れる現象が起きる。

この再成熟期の最大の特徴は、価格競争が弱まり、利益率が急上昇する点である。供給者が減少することで、ユーザーが選べる商品数が減り、その分自社の販売シェアが上昇する。競合不在状態では無理な値引きが不要になり、クーポン・広告の使用を抑えても売れるようになるため、限界利益率が回復し、利益額が大きく増える。

しかし、この“第5フェーズ”に入れるかどうかは、運営者の戦略と耐久力次第であり、保証された未来ではない。競合が撤退する市場もあれば、代わりに強い新規参入者が現れる市場もある。価格競争が永続的に続くカテゴリーもあり、必ずしも衰退後に成熟期が戻ってくるとは限らない。そのため、このフェーズは「競合の出方」「市場の需要残存度」「広告コスト構造」「価格弾力性」など外部要因に大きく左右される。

つまり、この再成熟期は戦略的に“狙って到達できるものではなく”、
・運よく競合が減った
・市場が残っていた
・自社が撤退せず生き残った
この3つが揃ったときのボーナスフェーズである。

一方で、「衰退期を耐える価値があるかどうか」は、事業判断として重要である。耐えるべきか、撤退すべきかを見極めるポイントとしては、
・競合の撤退スピード
・原価率と利益構造の改善余地
・最低限の黒字を維持できるか
・広告投資を抑えても販売速度を維持できるか
・カテゴリー全体の需要残存度
などが挙げられる。

衰退期でも最低限の利益が出せるなら、競合撤退後の市場を取るために耐える価値がある。特に楽天市場の場合、レビューや検索実績という“資産”が存在するため、一度市場のトップポジションを取った商品は再浮上しやすく、競合が減った瞬間に一気に利益フェーズに戻ることがある。

このように、プロダクトライフサイクルの現実の運用は「導入 → 成長 → 成熟 → 衰退 → 再成熟」という5段階モデルで捉える方が実態に近い。衰退期を迎えたからといって即撤退するのではなく、どこまで耐えるべきか、再成熟期が訪れる可能性がある市場なのかを見極めることが重要である。

結論として、
・衰退期は終わりではなく“第5フェーズ”の前段階
・競合撤退後に再成熟期が訪れることがある
・長期的にマネタイズできる市場は耐える価値がある
・ただし成功は競合状況次第で保証されない
・戦略的な耐久と見極めが利益最大化につながる

この考え方は、楽天市場のような動的競争市場において特に重要であり、長期運営の視点から高い再現性をもつ戦略である。

研究レポート

Posted by takahiro